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第92回定例研究会



開催日時: 2016年9月29日(木)  17:00〜18:00

演 題:   「毒もみのすきな署長さん」と能「鵜飼」と常不軽菩薩
        −−署長さんの「毒もみ」と
                 鵜使いの「鵜飼」の「面白さ」−−

講 師:   田中 成行 氏
       (岩手大学教育学部准教授・国語教育)

会 場:   岩手大学農学部1号館2階1号会議室




講師の田中成行氏
 


【発表要旨】
 宮澤賢治作「毒もみのすきな署長さん」の署長さんが、国で禁じられた「毒もみ」で魚を捕り死刑となった時の最期の言葉「あゝ面白かった。おれはもう、毒もみのことときたら、全く夢中なんだ。いよいよこんどは、地獄で毒もみをやるかな」と言う言葉と、能「鵜飼」の、殺生禁断の所で鵜を使って魚を捕り、殺されて地獄に落ちていた漁師の言葉「おもしろの有様や。底にも見ゆる篝火に。驚く魚を追ひまはし。かづき上げすくいあげ。隙なく魚を食ふ時は。罪も報いも後の世も。忘れはてゝおもしろや」という言葉が重なる。いずれもその地の法を破って魚を捕り、捕まって死刑になっても「毒もみ」や「鵜飼」で魚を捕ることを「面白い」と言い続ける人物を描いている。賢治の蔵書に能の詞章を解説した『謡曲通解』があり、其の注には供養して成仏させるワキの旅の僧を「日蓮上人」とする能「鵜飼」は、法華文学を目指した賢治にとってふさわしい題材であるといえよう。どんな「悪人」も「あなたは必ず成仏します」と敬って礼拝した、日蓮も目指した「常不軽菩薩」の如く、諸国を旅して亡霊を思いやり供養してこの世での一番の思い出を夢の舞台に再現させる能のワキの「諸国一見の僧」の心と、宮澤賢治が作品を通して描こうとした心の共通点を見つめたい。