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第101回定例研究会



開催日時:2018年9月18日(火)16:30〜18:00

演 題:賢治作品にみられる自己犠牲・自己否定
    および隣人愛の概念について

講 師:プラット・アブラハム・ジョージ 氏
   (インド国立ジャワハルラル・ネルー大学教授)
会 場:岩手大学農学部1号館2階1号会議室





 


【発表要旨】
 私は以前から賢治作品に見られる東洋思想、非暴力主義、菜食主義、キリスト教的な思想の表象、自己犠牲と自己否定の概念、隣人愛の思想などに興味を持ち、長年研究を重ねてきました。今回の講演では、『賢治作品に見られる「自己犠牲」「自己否定」及び「隣人愛」について発表しました。殆んどすべての賢治作品の中に「自己犠牲」や「隣人愛」の概念が潜んでいることは確かであるが、前期作品の中の「自己犠牲」と後期作品の中の「自己犠牲」は、それぞれ性質が違います。もちろん、両方とも人道主義的な思想が中核をなしているが、「よだかの星」の中のよだかの自己犠牲的な行動や、「銀河鉄道の夜」の中の蠍の人道主義的な祈りに含まれている自己犠牲的な思想は、他人の幸福を目指すと同時に自己の成仏も目指す行動です。また、自分の命は危険な状態になっていて、そこから逃げるための選択肢が見つけられない場合の「自己犠牲」と言ってもいいです。それに対して、「雨ニモマケズ」の中の困っている人々の仲間入りをして、彼らの面倒を見てやりたいと希う詩人の自己犠牲的な考えや、逃げ道があったのに進んで死を迎えた、「グスコーブドリの伝記」の主人公ブドリ及び「銀河鉄道の夜」の中の青年の自己犠牲的な行動などは、自己の成仏を考えずに、他人の幸福ばかりを目指して実行する、云わば、一種の自己否定的な、利他心と隣人愛に基づいた行動です。
 また、特に後期の賢治作品に見られる「利他心」の考え、つまり自己否定的な自己犠牲の考えをインドの「アッドイダ」(Advaita)哲学と比較して、賢治の思想とインド思想の類似性を見付け出せようと考えたのも今回の発表の一つの試みでありました。